2013.12.12 上越タイムスに掲載されました

続・小説「坊っちやん」誕生秘話

『完結編』を刊行

勝山一義さん 「山嵐」に焦点

 

2013年 1212日(木曜日) 上越タイムス

 

 

 元関根学園高校長、ホコ自習館長の勝山一義さんの「文芸たかだ」での連載、「続・小説『坊っちやん』誕生秘話」が、たかだ越書林から刊行されている。本体価格1500円。夏目漱石の初期の代表作「坊っちやん」の主要な登場人物のほとんどに実在のモデルを想定することで、日露戦争前後の政府の志向、その影響を被る教育現場を浮き彫りにする労作だ。「小説『坊っちやん』のモデル関根萬治」(2007年・たかだ越書林)、「小説『坊っちやん』誕生秘話」(2009年・文芸社)に続く完結編。

 前著までに「坊っちやん」の主人公の「おれ」のモデルに、宮城県角田市の宮城県第四中学校で騒動に巻き込まれ、転任を余儀なくされた関根萬治(関根学園高創始者)、騒動後に赴任し、騒動の情報を漱石にもたらした堀川三四郎(漱石の弟子)2人の行動を合わせて漱石はイメージを形成したと詳説。本書では、物語展開の原動力となる硬骨漢「山嵐」に焦点を当て、そのモデルに同第四中の同僚教師、塩田弓吉を想定し、その生誕地や赴任先などをつぶさに訪ね、教師としての業績や思想、人となりを明らかにしている。ほかに、研究課程のトピックを網羅する「こぼれ話」、三部作の概要、関根萬治の伝記を収載する。

 小説の人物造形にどこまで実在のモデルの影響を考慮するかの問題はあるとしても、著者の調査は綿密を極め、説得力がある。日露戦勝利によって西欧列強に互し大国の地位をうかがうまでになった日本は、国家主義と自由思想の葛藤が増す時代。地方の旧制中学といえども、強まる思想統制と教諭ら知識人の抵抗が深刻であり、漱石は危機感を抱きながら一遍のユーモア小説に、国の行く末をあんじ警鐘を鳴らしたとする著者の主張はうなずける。

 

 

 

 

「小説『坊っちやん』誕生秘話」シリーズのご注文はこちらから

続々・小説『坊ちやん』誕生秘話
続々・小説『坊ちやん』誕生秘話
続・小説『坊っちやん』誕生秘話
続・小説『坊っちやん』誕生秘話
小説『坊っちやん』誕生秘話
小説『坊っちやん』誕生秘話